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※このページは、大成建設グループ統合レポート2022に掲載された内容です。

大成建設グループは昨年、中長期的な外部環境や構造変化を特定し、グループ理念などに基づいて「中長期的に目指す姿【TAISEI VISION 2030】進化し続けるThe CDE3(キューブ)カンパニー~人々が豊かで文化的に暮らせるレジリエントな社会づくりに貢献する先駆的な企業グループ~」を策定するとともに、「中期経営計画(2021-2023)」をスタートさせました。中長期の外部環境・構造変化として特定した3つのX(IX:業界再編圧力の高まり、SX:環境・社会課題を事業を通じて解決する方向へ、DX:DXが競争力を左右する時代へ)はこの1年間で益々鮮明になり、これらの課題に先駆的に対応することが、当社グループの競争優位性や持続的な成長を左右する重要な要素だと考えています。

中期経営計画初年度の総括について

「中期経営計画(2021-2023)」のスタートから1年が経過しました。大成建設グループを取り巻く経営環境、ならびに中期経営計画初年度の総括等についてご説明します。
日本経済は、新型コロナウイルス感染症による消費や設備投資への抑制圧力が和らぐ中、緩やかな回復基調を辿りましたが、原料・エネルギー価格の世界的な高騰をはじめとしたインフレリスクに加え、ロシアのウクライナ侵攻による世界経済への下押しリスクが懸念され、先行き不透明感が払拭されない状況にあります。建設業界においては、政府の国土強靭化に向けた防災・減災対策や老朽化インフラの維持・更新需要等に牽引され、公共投資は底堅さを維持するとともに、コロナ後を見据えた設備投資意欲の高まりや都市部の大型再開発事業などの下支えにより民間設備投資も回復局面にあるものの、建設資材等の急騰やウクライナ情勢に起因する市場環境の変化への対応が喫緊の課題となっています。
そうした中、経営成績については、受注高は減少、売上高は増収、営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益は減益という結果になりました。昨今、環境問題や人権への対応が重要性を増す中で、サステナビリティ関連課題については、より戦略的に対応していく必要があることから、サステナビリティ経営に関する組織体制を一元化し、「サステナビリティ総本部」を設置するとともに、サステナビリティ総本部長をCSO(Chief Sustainability Officer)に選任し、サステナビリティ課題とSDGsへの取り組みを強化することとしました。また、建設業を中核とした事業を通じてサステナビリティ課題の解決を図るというサステナビリティ・トランスフォーメーションを実現し、人々が豊かで文化的に暮らせるレジリエントな社会づくりに貢献することを基本方針とする、「サステナビリティ基本方針」を策定しました。
2050年までのカーボンニュートラルは建設業界でも重く受け止めるべき課題です。当社グループでは、新たな環境目標として、2030年までに売上高あたりのCO2排出量を、2019年度比で50%削減する目標を掲げました。そのほか、ICP(インターナル・カーボンプライシング)の導入、再生可能エネルギー事業への投資及び脱炭素関連の技術開発投資を使途とするグリーンボンドの発行、経済産業省が主導する「GXリーグ」への賛同など、グループ長期環境目標である「持続可能な環境配慮型社会の実現」に向けた取り組みを本格化しています。
人権についても、バリューチェーン全体で取り組むべき重要な課題と認識しています。事業活動による人権への負の影響を生じさせないよう、自主的・積極的・能動的に企業としての責任を果たすことにより、包摂的な社会の実現に貢献していくことをコミットするために「人権方針」を改定し、その中で、人権デュー・ディリジェンスのプロセスを導入することを明記し、優先的に対応する人権リスクを特定しました。今後、人権リスクの予防・軽減に係る諸施策や追跡調査を実施し、その結果等をサステナビリティ委員会での審議を経て取締役会に報告するなど、人権リスクの予防・軽減に継続して取り組んでいきます。

今後の受注環境と2022年度の業績予想について

2022年度の日本経済は、コロナ禍からの脱却に向けた社会経済活動の正常化が進み、企業収益が段階的に強さを取り戻し、景気全体としても回復傾向を維持することが期待されますが、世界的な物価高騰やウクライナ情勢に起因する下振れ懸念を背景に、依然として不確実性の高い状況が継続するものと想定されます。建設業界においては、各種政策に基づく堅調な公共投資に加え、首都圏の大規模案件を中心とした民間建設投資も前年度並みの水準で推移することが見込まれる一方、厳しい価格競争や更なる原材料・燃料価格の上昇等のリスク要因に留意する必要があると考えています。
そうした中、2022年度の業績については、2021年度に比べて豊富な案件量が見込めることから、受注高は増加を見込んでいます。また、売上高も、手持ちの大型工事が進捗することから増収を見込んでいます。一方、営業利益等は、追加工事獲得など未確定の好転要因を全ては織込んでいないことに加え、手持ち工事に占める、厳しい競争環境下で受注した利益率の低い大型工事の割合も増すことから、概ね2021年度と同程度にとどまる見込みです。

マテリアリティについて

当社グループでは社会からの要請に対して、事業特性やビジネスモデルを活かし、どのような社会課題の解決に取り組むべきか、社会に貢献できるのかを明確にするために、SDGs等を踏まえマテリアリティ(重要課題)を特定し、定期的に見直しています。中期経営計画(2021-2023)では、8つのマテリアリティの達成に向けた重点施策や具体策を定めました。マテリアリティに関する取り組みの詳細は別頁にてご説明しますが、脱炭素をはじめとする自然資本ならびに人的資本に関する取り組みについて概要をご説明します。

自然資本に関する取り組みについて

脱炭素社会実現に向けた取り組みとしては、引渡し後の建物運用段階におけるCO2排出量削減や、グリーン調達拡大に向けた取り組みを実施しています。具体的には、①ZEB及びZEF(net Zero Energy Factry)の展開、②グリーン・リニューアルZEBの取り組みの推進、③CO2をコンクリートの中に固定するカーボンリサイクルコンクリートをはじめとした環境配慮コンクリートの実用化に向けた研究開発、④建物の調達段階・施工段階・運用段階のライフサイクル全体に渡って排出されるCO2をトータルの収支でゼロにする「T-ZCB(ゼロカーボンビル)」の推進(当社グループ施設において日本初の実証を目指す)等に注力しており、いずれも社外からの関心も非常に高いと感じています。
自然共生社会の実現に向けた取り組みとしては、産官学民が連携して「自然と共生した開発」を実践してきた成果が評価されて、この度、環境大臣賞(主催:国立環境研究所・日刊工業新聞、後援:環境省)を受賞した「富士山南陵工業団地」などで得られたノウハウを活用し、生物多様性の保全につながる取り組みも今後進めていく必要があると考えています。
環境関連施策は企業の競争優位性を確保するためのビジネスチャンスです。今後の市場規模拡大も見込めることから、注力して取り組んでいきたいと考えています。

人的資本の強化に向けた取り組みについて

固定の生産施設をもたない当社グループにとって、人財こそが収益の源泉であり、その強化は喫緊の課題です。社員と会社が強いエンゲージメントで結ばれていることが、生産性の向上にもつながり、当社グループの持続的な成長と進化に大きく寄与するものと確信しています。まずは現状を把握するために、今年度第一四半期に社員に対するエンゲージメントサーベイを実施しましたので、今後、その結果を基に改善施策を継続的に実施していきます。また、従業員の士気向上、処遇改善及び建設業と当社の更なる魅力向上を目的に、人事・給与制度の改善や人財育成・研修制度の充実、ダイバーシティ&インクルージョンの推進など、将来の人財確保と働きがいの向上につなげ、会社の競争力を強化していきます。

大成建設グループの使命

当社グループの目指す姿の中で私が最も重要と考えているのは『レジリエントな社会づくりに貢献する』の部分です。レジリエントな社会とは、「様々な自然災害・異常気象やパンデミック、急激な経済変動等に対して、社会インフラが その影響に耐え、しなやかでかつ粘り強さを保持し、迅速な回復力を有することで、人々が安全・安心な生活が送れる社会」です。当社グループの先進的な技術力と培った知見を結集して、インフラ整備や災害に強い街づくり、高品質な建物の提供、災害復旧、持続可能な環境配慮型社会の実現などを行い、より良い社会基盤を構築することで、人々の暮らしを安全・安心に、そして豊かにすることこそが当社グループの使命であると考えます。

最後に

2022年度は、新型コロナウイルス感染症やウクライナ情勢による影響など、事業環境の変化を見過ごすことなく新たな課題の発生に対して迅速に対策を講じながら、創業150周年であり中期経営計画最終年度でもある2023年度の目標達成に向けたアクションを加速していく年になります。創業者である大倉喜八郎は、激動の時代に先を見通して事業の道を進み、当社をはじめとする多彩な企業の設立・経営に携わり、日本の経済発展に貢献しました。変革の時代を飛躍の機会と捉え、前例のないことにチャレンジした大倉喜八郎のパイオニアスピリットの精神に倣い、不確実性の高い現下の経営環境を乗り越えていくとともに、お客様に新たな価値と満足と感動を提供し、社会課題の解決と信頼獲得に努めていくために、私がリーダーシップをもって取り組んでいく所存です。
この「大成建設グループ 統合レポート2022」では、次世代に向けた我々の取り組みの一端をご紹介しています。当社グループのグループ理念である「人がいきいきとする環境を創造する」の実現に向けた我々の取り組みに、是非ご理解、ご支援をよろしくお願い致します。

相川喜郎相川喜郎

代表取締役社長

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