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TCFDに基づく情報開示
気候変動やそれに起因する⾃然災害等が頻発、かつ甚⼤化し、私たちの住まいや暮らしの安全・安⼼が脅威にさらされています。こうした変化は、京都議定書からSDGs、パリ協定の採択と続く脱炭素の⼤きな流れとなり、⽇本を含め世界中の国々の政策に⼤きく影響を及ぼすとともに、企業の果たす役割にも期待が⾼まっています。
⼤成建設グループは、気候変動による事業への影響を重要な経営課題の⼀つと捉え、2020年7⽉にTCFD提⾔に賛同し、2021年5月からTCFD提言に則った情報を開示しています。このたび、2021年10月のTCFD提言付属書の一部改訂に対応し、1.5℃シナリオでのリスク/機会の抽出と、開示推奨気候関連指標の検討を行い、一部を更新しました。
環境方針
2023年3月に環境方針を改定し、「基本的な考え方」に、グループ長期環境目標の達成を責務とすること、事業を通じて脱炭素社会、循環型社会、自然共生社会の実現に貢献することを明記しました。
環境方針(抜粋)
- 基本的な考え方
大成建設グループは「人がいきいきとする環境を創造する」というグループ理念およびサステナビリティ基本方針のもと、自然との調和の中で、建設事業を中核とした企業活動を通じて良質な社会資本の形成に取り組んでいる。
建設業を中核とした企業グループとして、環境課題を重要なサステナビリティ課題と捉え、事業活動が環境に及ぼす影響と環境から受ける影響を十分に認識し、「持続可能な環境配慮型社会の実現」を目指す。
そのために、環境関連法令等を遵守し、グループ長期環境目標を達成することを責務とする。また、気候変動をはじめとする環境関連の「リスクと機会」を的確に抽出し、環境関連技術・サービスの開発と普及を進め、事業を通じて脱炭素社会、循環型社会、自然共生社会の実現に貢献する。 - グループ長期環境目標
大成建設グループは、基本的な考え方に示す「持続可能な環境配慮型社会の実現」に向けて、グループ長期環境目標(「TAISEI Green Target 2050」)を策定し、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の3つの社会、および「森林資源・森林環境」「水資源・水環境」の2つの個別課題に対する「責務」「事業を通じた貢献」「取り組み」を定め、サプライチェーン全体でステークホルダーと共に環境目標の達成に取り組む。 - 環境デュー・ディリジェンスの継続的な実施
基本的な考え方に示す「持続可能な環境配慮型社会の実現」に向けて、「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」などの国際基準に則り、環境デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、継続的に実施する。運用にあたり、適宜見直し・改善を図る。
大成建設グループの事業活動が環境に及ぼす影響について、外部の専門機関等による知識を活用し、ステークホルダーとの対話・協議を適宜実施するよう努める。
グループ長期環境目標 TAISEI Green Target 2050
3つの社会
2030年目標 | 2050年目標 | ||
---|---|---|---|
脱炭素社会
![]() |
CO2排出量(2019年度比) | CN|カーボンニュートラルの実現・深化
|
|
売上高あたりの 排出量 |
スコープ1+2 ▲50% スコープ3 ▲32% |
||
総排出量 | スコープ1+2 ▲40% スコープ3 ▲20% |
||
循環型社会
![]() |
グリーン調達の推進 建設廃棄物の最終処分率3.0%以下 |
CE|サーキュラーエコノミーの実現・深化
|
自然共生社会
![]() |
ネイチャーポジティブに貢献する提案・ 工事の実施 |
NP|ネイチャーポジティブの実現・深化
|
2つの個別課題
目標 | |
---|---|
森林資源・ 森林環境 ![]() |
|
水資源・水環境
![]() |
|

ガバナンス
会議体
気候変動に関する議案を審議する会議体として、「サステナビリティ委員会」と「サステナビリティ推進委員会」を設置しています。
取締役会委員会である「サステナビリティ委員会」ではESG全般に関する重要な⽅針や施策を、経営会議の諮問機関である「サステナビリティ推進委員会」では環境経営に関する基本⽅針や中⻑期⽬標を審議しています。
サステナビリティ委員会は多様な視点を取り入れるために社外取締役を委員長とし、代表取締役社長を含む取締役6名(うち社外取締役2名)で構成されています。これら会議体での審議を経て取締役会で審議・決定されています。
取締役会で審議・決定された議案は、当社の各事業部⾨及びグループ各社に伝達され、それぞれの経営計画・事業運営に反映されています。また、その内容は建設工事作業所における具体的な実施事項に織り込まれ、取引先にも協⼒を要請することになります。
気候関連ガバナンス体制図

気候関連課題の業務執行責任者
気候関連課題を含むサステナビリティ経営推進の責任を明確化するため、業務執行の最高責任者である代表取締役社長の下に、CSO(Chief Sustainability Officer 最高サステナビリティ責任者)を置き、サステナビリティ総本部長をCSOに選任しています。CSOは、取締役会で決定した気候関連課題への取り組みを含む、業務執行におけるサステナビリティ経営の推進に関する責任を負っています。またCSOはサステナビリティ推進委員会の副委員長も担っています。
取締役会における最近の主な環境関連審議状況
- ・2021年 2月:長期環境目標の改定
- ・2022年 2月:グループ環境目標の策定
- 8月:「大成建設グループ統合レポート2022」の発行
- ・2023年 2月:環境方針等の改定
戦略
気候変動に伴うリスクと機会には、気温上昇を最低限に抑えるための規制の強化や市場の変化といった「移行」に起因するものと、気温上昇の結果生じる急性的な異常気象といった「物理的変化」に起因するものが考えられます。
気候変動に柔軟に対応した事業戦略を立案するため、複数のシナリオを⽤いてリスクと機会を抽出して事業への影響評価を行い、事業戦略を策定、中期経営計画等に反映しています。

主な参照シナリオ
移行シナリオ | 国際エネルギー機関(IEA) 「World Energy Outlook 持続可能な発展シナリオ(SDS)」…2℃シナリオ 「Net Zero by 2050(NZE)」…1.5℃シナリオ |
---|---|
物理的変化 | 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC) 「代表的濃度経路シナリオ(RCP8.5)」…4℃シナリオ |
リスクと機会
分類 | リスク/機会 | 内容 | 影響度 | |
---|---|---|---|---|
移行 | 炭素価格導入、CO2排出規制強化による市場縮小と 建設コスト増加 |
リスク |
|
中 |
|
小 | |||
リニューアル需要の増加 | 機会 |
|
中 | |
省エネ・再エネ関連需要の増加 | 機会 |
|
中 | |
物理的 | 夏季の平均気温上昇 | リスク |
|
中 |
自然災害の甚大化・頻発化 | リスク |
|
中 | |
リスク |
|
大 | ||
機会 |
|
大 | ||
機会 |
|
大 | ||
海面上昇 | 機会 |
|
大 |
※ 想定される事業への影響度を「大」「中」「小」でカテゴリ分け
気候変動への対応策
シナリオ分析の結果抽出された気候変動に伴うリスクの軽減と機会の拡大を図るため、気候変動への対応策を立案し、中長期的に目指す姿「TAISEI VISION2030」および「中期経営計画(2021-2023)」に反映させています。
またグループ長期環境目標「TAISEI Green Target 2050」の達成に向け、脱炭素と持続的な成長を両立するためロードマップを策定しています。
気候変動関連の経営戦略
炭素価格導入や法規制強化に伴う、市場の縮小と建設コストの増加への対応 |
|
---|---|
リニューアル、省エネ・再エネ関連需要増加への対応 |
|
異常気象による建設作業所の生産性低下への対応 |
|
異常気象と災害の激甚化、頻発化、海面上昇への対応 |
|

環境関連研究開発投資
日本政府の目標「2030年に新築される建築物についてZEB基準の水準のエネルギー性能が確保されていることを目指す」の実現に向けて、ZEB建物の需要が今後増加していくことが予想されています。また環境配慮コンクリートや木質建築などの低炭素/脱炭素建材の需要が今後増加することも予想されています。
市場の拡大が予想される中、積極的な研究開発投資を行うことで、競合するゼネコン他社や建材メーカーに開発面で先行し、市場確保を図ります。
財務上の影響額
中期経営計画(2021-2023)において3ヵ年の環境関連投資額を600億円、そのうち420億円を、経済と環境の好循環により成長が期待される産業分野に貢献する技術開発および競争優位性のある技術開発に投資することとしています。2022年9月までにこのうち約230億円を実行しています。
また、グリーンファイナンス・フレームワークに準拠したグリーンボンドやサステナビリティリンクローンによる資金調達を実行し、投資資金に充当しています。
インターナルカーボンプライシング(ICP)
2021年に、下記3点の効果を期待してインターナルカーボンプライシング制度を導入しました。
ICP価格は、国際エネルギー機関(IEA)の「Net Zero by 2050(NZE)」等を参考に、足元では8,000円とし、以降2050年まで逓増する設定としています。
期待する効果
- ICP制度の導入によってCO2排出削減量が金額換算されることで、脱炭素に寄与する投資や施策の成果・効果を可視化
- 脱炭素に寄与する取り組みへのインセンティブや投資判断の指針として活用することで、脱炭素に寄与する設備投資、技術開発、環境負荷低減活動が促進され、その結果、カーボンニュートラルの達成に向けた取り組みの加速
- カーボンプライシングの潜在的な影響を認識し、炭素税等の導入に備えた準備
リスクマネジメント推進体制
リスクマネジメント方針、リスクマネジメント基本規程のもと、全体的に体系化されたリスクマネジメントシステムを確立し、取締役会の監督のもとに、品質、コンプライアンス、情報、安全、環境等のESGに関する主なリスクにも対応する適切な管理体制を整備しています。
全社的リスクマネジメント
全社的リスクマネジメントの推進
事業運営に伴うリスクを適切に把握・管理するリスクマネジメント体制の継続的な運用に努めており、代表取締役社長を「最高責任者」、管理本部長を「CRO(Chief Risk Management Officer)」としたリスクマネジメント体制を構築しています。毎年、当該年度に顕在化したリスクを踏まえ、翌年度のリスク管理内容を見直しすることで、PDCAサイクルを運用するとともに、リスクマネジメント体制の有効性を検証しています。

事業等のリスク
企業経営に重大な影響を及ぼす可能性があるリスクについては、経営会議及び取締役会に報告され、当該リスクへの対処方針を総合的に検討・決定し、有価証券報告書の「事業等のリスク」で報告しています。
気候変動問題リスク
「事業等のリスク」の一つとして気候変動問題対応リスクを掲げており、TCFD提言に対応したリスクの特定・評価を実施しています。全社横断的なTCFDワーキンググループ(TCFD WG)を設け、各部⾨の事業に関する気候変動リスクの洗い出し及び事業への影響度の分析を⾏うとともに、気候変動以外のリスクとの相対評価を実施し、必要な対策を講じていることを確認しています。TCFD WGで分析されたリスクはサステナビリティ委員会で審議され取締役会に報告されます。
また、国際規格ISO14001に基づいた環境マネジメントシステム(EMS)において評価・特定されているリスクと整合しています。
指標と目標
CO2排出量削減目標(2019年度比)
(原単位:t-CO2/億円|総排出量:千t-CO2)
基準年 | 実績 | 目標 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
2019 年度 |
2022 年度 |
2023年度 | 2030年度 | 2050年度 | ||
KPI | TAISEI Green Target 2050 | |||||
スコープ1+2 | 排出量原単位 削減率 |
21.3 | 18.4 ▲13.8% |
18.2 ▲15% |
10.7 ▲50% |
0 |
スコープ1+2 | 総排出量 削減率 |
368 | 291 ▲20.9% |
346 ▲6% |
218 ▲40% |
|
スコープ3 カテゴリー1+11 |
排出量原単位 削減率 |
288.8 | 312.8 +8.3% |
— | 196.6 ▲32% |
0 |
スコープ3 カテゴリー1+11 |
総排出量 削減率 |
4,988 | 4,961 ▲0.5% |
— | 3,990 ▲20% |
2022年度の当社グループのCO2排出量
- 当社グループのCO2排出量の9割超がスコープ3
- スコープ3の中でも大半がカテゴリー1とカテゴリー11
- カテゴリー1:鉄骨・鉄筋などの鋼材や、セメント、コンクリート等の製造時に排出されるCO2
- カテゴリー11:その年に引き渡した建物の使用期間に、年間想定CO2排出量を掛けて算出
使用期間は用途によって30~60年であるため非常に多量となる
(千t-CO2)
排出量 | 割合 | |
---|---|---|
スコープ1 | 217 | 3.9% |
スコープ2 | 75 | 1.3% |
スコープ3 | 5,284 | 94.8% |
合計 | 5,575 | 100% |
スコープ3のうち、カテゴリー1、11
排出量 | 割合 | |
---|---|---|
カテゴリー1 | 2,105 | 39.8% |
カテゴリー11 | 2,856 | 54.1% |
その他のカテゴリー | 323 | 6.1% |
合計 | 5,284 | 100% |